女子高に進学してもトイレへの恥ずかしさは消えなかった|高校生活の始まり【実体験】

高校に入学した。

でも私は――特にやりたいこともなかった。

中学校までは、何かに打ち込んだ記憶もない。
ただ、目立たないように、問題を起こさないように過ごしてきただけ。

高校でも、きっと同じように過ごすんだろうと思っていた。

けれど一つだけ、避けられないものがあった。

一年生は、半年間は必ず部活に入らなければならない。

だから、何かを選ばないといけなかった。

できるだけ楽で責任がないものがイイなと思ってた。

そう考えて、私が選んだのは――文学部だった。

本を読んで、みんなで感想を共有するだけ。

説明を聞いたとき、「これなら大丈夫そう」と思った。

実際に入ってみると、想像していたよりもずっと緩かった。

上下関係はほとんどなくて、先輩も後輩もフレンドリーに話す。
無理に発言を求められることもなくて、ただそこにいるだけでも許される空気。

放課後に集まって、それぞれ読んだ本の感想を軽く話す。
あとは、図書館の貸し出し管理や、新しく入れる本のリクエストをまとめて購入して図書館に並べる仕事。

本を読むのも嫌いじゃなかったし、図書係の仕事も苦ではなかった。

――ただ、その“リクエスト”が、少しだけ特別だった。

普通の参考書や話題の本ばかりだったけれど、購入する時に自分たちが読みたい本も数冊紛れ込ませて購入してる。
そして、図書館には並べずに私有物に近い形で回し読みされていた。

むしろ、「これも面白かったよ」と軽く共有されるくらいで。

その中には、少し刺激の強いものもあった。

最初は、ただの好奇心だった。

でも、一度知ってしまうと、知らなかった頃には戻れない。

「こんなジャンルもあるんだ」

そう思うたびに、世界が少しずつ広がっていく。

――そして、それは本だけじゃなかった。

ある日、部室の棚に見慣れない冊子が置かれているのに気づいた。

同人誌。

誰かが持ち込んだのかと思ったけれど、先輩が何気なく言った。

「OBの人が、たまに置いてくんだよね」

まるで、お菓子の差し入れみたいな軽さで。

そこにあったのは、今まで見たことのない種類のものだった。

内容も、表現も、全部が新しくて――少しだけ過激で。

戸惑いはあったけれど、目を逸らせなかった。

ページをめくるたびに、自分の知らない感覚が増えていく。

それが良いのか悪いのかもわからないまま、ただ受け入れてしまう。

気づけば私は、そういうものを“知っている側”になっていた。

どんなジャンルがあるのか。
どこが人気なのか。
何が“普通”で、何が“少し変わっている”のか。

――そして、ふと思う。

「人には見せない部分って、こんなにあるんだ」

教室では見えない顔。
普通に過ごしている人たちの、もう一つの側面。

それを知ってしまったことで、私の中の感覚も、少しずつ変わっていった。

人に知られたくないことがあるのは、自分だけじゃない。

みんな、何かを隠している。

そう思うと、少しだけ安心する。

でも同時に――

自分がトイレに行くのを恥ずかしがっていることは言えなかったし、
言っちゃいけないしトイレに行くところを見られたくないという気持ちが強くなってきた。

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