ページをめくって、すぐに気づく。
――BLや百合。
見たことのない関係性だった。
今まで、恋愛といえば男女でするものだと思っていた。
それが当たり前で、それ以外は考えたこともなかった。
でもそこに描かれていたのは、全く違う形だった。
男の人同士。
女の子同士。
最初は戸惑った。
けれど、読んでいるうちに――妙にドキドキしている自分に気づく。
「こういうのも、あるんだ」
知らなかっただけで、世界はもっと広かった。
その感覚が、不思議と嫌じゃなかった。
むしろ、少しだけ心が引き寄せられていく。
部室の空気も、それを後押ししていたのかもしれない。
先輩たちは、そういう話を特別なものとして扱わなかった。
「女子高だし、女子と付き合うしかなくない?」
そんなことを、冗談なのか本気なのかわからない口調で言う。
みんな笑っているけど、完全に冗談とも言い切れない空気。
距離感も、どこか近い。
隣に座ると自然に肩が触れるし、
後ろから軽く抱きしめてくる人もいる。
最初は驚いたけれど、嫌ではなかった。
むしろ、そういう距離感が“普通”のように感じられていく。
そして、噂もあった。
「あの二人、付き合ってるらしいよ」
誰かが小さな声で言う。
冗談っぽく聞こえるのに、完全に否定する人もいない。
視線の向け方や、ちょっとした仕草を見ると、
本当なのかもしれないと思えてしまう。
――もしかして。
この人たちは、もう“そういうふうに”なっているのかな。
そんなことを考える自分がいる。
驚きよりも、好奇心の方が強くなっていた。
「目覚めてるのかな」
そんな言葉が、ふと頭に浮かぶ。
それが何を意味するのか、はっきりとはわからないまま。
ただ、自分の中の何かが、少しずつ変わっていくのを感じていた。
今まで“当たり前”だと思っていたものが、少しずつ崩れていく。
代わりに、新しい感覚が入り込んでくる。
そしてその変化は、静かに、でも確実に――
私の内側に残っていった。

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