新入社員の教育担当になってから、新入社員のトイレの回数が気になるようになった。
新入社員は、基本的に先輩と一緒に動く。
まず仕事の流れを説明して、実際に作業してもらう。
途中でわからないところがあれば質問を受けて、最後に完成したものをチェックする。
その繰り返し。
さらに、合間には打ち合わせも入る。
「この後、○○の確認お願い」
「終わったら次はこの作業ね」
そんなふうに予定が繋がっていくから、新入社員は自然と私の近くにいる時間が長くなる。
そして私は――仕事中にほとんどトイレ休憩を取らない。
トイレ休憩しなくても問題ないからだ。
でも、新入社員からすると違うらしい。
先輩が席を立たないから、自分も行きづらい。
そういう空気になる。
最初は気づかなかった。
でも、ある日ふと思った。
「あれ、この子も全然席立たないな」
って。
午前中から一緒に仕事をしていても、一度も「トイレ行ってきます」と言わない。
説明を聞いて、作業して、確認して。
その間ずっと隣にいる。
昼休憩になってようやく、同期の子たちとお昼ご飯にいくので席を立つが
そのままエレベーターに向かうのではなく足早にトイレの方に向かっていく
たぶん、我慢しながら仕事していたんだと思う。
午前は9時から12時の3時間なので我慢するのはそんなに難しくない
でも午後は13時から18時までの5時間。
会議、修正、確認作業。
仕事をしていると時間はあっという間で、気づけば5時間近く経っている。
私は慣れているから、そのまま続けられる。
もちろん途中から意識はしている。
少しずつ重くなってくる感覚もわかる。
でも、平静を装うことには慣れていた。
ただ、新入社員は違う。
16時を過ぎた頃から、少しずつ様子が変わってくる。
座り直す回数が増える。足をギュッとしめるような形で座っている。
「この資料なんですけど……」と話しかけながら、どこか集中しきれていない感じ。
それでも、席は立たない。
たぶん私を気にしている。
「先輩が行ってないから、行きにくい」
そう思っているのかもしれない。
そして十八時。
仕事が一区切りついて、「今日はここまでにしようか」と声をかけた瞬間だった。
「お疲れさまでした、お先に失礼します」と言って足早に席を立つ
その子はかなり早足でトイレへ向かっていった。
当然会社の中なので走ったり前押さえをするわけじゃないけど、相当我慢している様子。
その後ろ姿を見ながら、私は少しだけ複雑な気持ちになる。
たぶん、私の影響もある。
先輩がトイレにいかないから、
「トイレ休憩がなく、仕事をしなきゃいけないんだ」と思わせてしまっている。
でも実際は、普通じゃない。
私はただ、“慣れてしまっている”だけだ。
本当は、もっと気軽に行けばいい。
そう思う。
思うけれど――
それでも私は、今日も席を立たない。
少しずつ重くなっていく感覚を抱えたまま、
何事もない顔で仕事を続けている。
そして、私からトイレに行って来たら?と声をかけることもしない。
そんなことしたら私がいつトイレに行くのかと想像されるのも嫌だからだ。
たとえ同性であっても恥ずかしい。

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