新入社員のトイレ事情③ 商談中、言い出せなくて…

新入社員のトイレ事情

午後の商談は、十四時から一時間の予定だった。

だから会社を出たのは十二時半。

移動時間を考えて少し早めに出発して、途中で新入社員の子と軽く昼食を取る。

私はその時点で、今日は少し長くなるかもしれないな、とは思っていた。

でも、せいぜい夕方くらいまで。

そう考えていた。

取引先に到着して、会議室へ通される。

最初の説明は順調だった。

資料を見せながら概要を説明して、質問に答えていく。

隣では新入社員の子が説明資料を投影しながら必死にメモを取っていた。

そして、一時間ほど経った頃だった。

先方の担当者が、少し前のめりな感じで言った。

「かなり前向きに検討したいと思ってまして」

その言葉に、空気が少し変わる。

さらに、

「もしお時間大丈夫なら、もう少し詳細をお聞きしてもいいですか?」

と続いた。

私は一瞬だけ予定を確認する。

本来なら、十六時前には会社へ戻る予定だった。

でも、この後に絶対外せない予定はない。

だから私は、「上司に確認しますので、少々お待ちください」と言って、一度上司へ連絡を入れた。

すると上司は、少し驚いたあとすぐにこう返してきた。

「それチャンスじゃん。今日はその打ち合わせ優先でいいよ」

「終わったら結果だけ教えて」

予想通り前向きに進めて欲しいという回答だった。

私はその内容を先方へ伝える。

すると担当者は嬉しそうに笑って、

「それは良かったです」

と言った。

さらに、

「実際に使うメンバーの意見も聞きたいので、担当者を呼んで準備させますね」

という流れになった。

その時点で、私は少しだけ覚悟する。

――長くなるかも。

でも、ここで断る理由はない。

仕事としては、かなりいい流れだった。

追加で来た担当者へ、最初の概要をもう一度簡単に説明する。

最初の会議にいなかった人もいるから、内容が重複する部分も多い。

それでも、相手は真剣だった。

細かい運用の話。
実際に導入した場合のフロー。
費用感。
権限管理。

質問が次々飛んでくる。

私はそれに答えながら、横で新入社員の子が少しずつそわそわしているのを感じていた。

時計を見る。

十六時。

もともとの終了予定は、とっくに過ぎている。

その頃から、その子は何度か姿勢を変えていた。

足を組み替えて、また戻す。

資料を持つ指先にも少し力が入っている。

たぶん、トイレを我慢してる。

でも商談中で、契約できるかどうかの瀬戸際

途中で席を立てる空気じゃない。

しかも先方の担当者は好感触で導入後の業務をイメージして具体的な質問をどんどんしてくる。

ここでいったんトイレ休憩というのは相当勇気がいる。

私自身も、少し前から意識していた。

昼に行ってから、もうかなり時間が経っている。

でも、まだ大丈夫。私は慣れている。

そう自分に言い聞かせながら、表情だけは崩さず話を続ける。

そして、打ち合わせが終わったのは十六時半だった。

結果としては、予想以上だった。

「次回、契約に向けて条件面を詰めましょう」

そこまで話が進んだ。

会議室を出たあと、新入社員の子は明らかにホッとした顔をしていた。

私は移動しながら上司へ電話する。

内容を報告すると、上司もかなり喜んでいた。

「それはでかいな」

「今日はもう時間も時間だし、そのまま上がっていいよ」

そう言われて、私は小さく息を吐く。

達成感と安心感。

その両方があった。

そして電話が終わったとたん新入社員が、申し訳なさそうに

「すみません、お手洗い行きたくて行ってきていいですか。」と伝えてきた。

幸いにもビルの1階にトイレがあったので、そこにあるから行って来たらと答えると
ありがとうございますと言って走っていった。

ずっと我慢していたのは気づいていたがこんなに行きたかったんだと驚いた。

人目があるのに関わらず走っていったので相当我慢していたんだと感じた。

トイレは空いていたのか5分経たないぐらいで戻ってきて、
お待たせしましたと少し恥ずかしそうにしていたけど、スッキリした顔で安心していた。

駅までの帰り道に、トイレは誰かが行く際に合わせていくタイプで自分から言い出すのは慣れていなく
どのタイミングで切り出せばいいのかわからず我慢することが多いという話もしてくれた。

多分さっき恥ずかしい姿を見せたことで舞い上がって色々話してるのかなと思いながらも聞いていました。

その会話の中で先輩はお手洗い大丈夫なんですか?と聞かれたが
自分のことになると急に恥ずかしくなり、大丈夫だよと答えて
話題を仕事に戻した。

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