彼女がトイレから戻ってきた時には、さっきまでの切羽詰まった様子がかなり落ち着いていた。
でも、どこかまだ恥ずかしそうで。
「お手洗い、ありがとうございました……」
なんて律儀に言ってくる。
私は思わず笑ってしまう。
「別にお礼言うようなことじゃないよ」
そう返しながら、冷蔵庫から材料を取り出した。
「朝ごはん、飲んだ次の日だし軽いスープ系でいい?」
そう聞くと、彼女は少し困った顔をする。
「いや、その……これ以上迷惑かけるのも……」
かなり遠慮している。
でも、ここまで介抱したあとに今さらそんなことを言われても、という気持ちの方が強かった。
私は苦笑しながら肩をすくめる。
「ここまできたら今さらじゃない?」
「一緒に食べましょうよ」
そう言ってから、ふと思い出して聞いた。
「それとも今日、何か予定ある?」
すると彼女は小さく首を横に振る。
「今日は特にないです」
「じゃあいいじゃない」
私がそう返すと、彼女は少しだけ安心したように笑った。
私は鍋に火をかけながら続ける。
「朝ごはん準備してるから、その間シャワー浴びてきたら?」
その言葉に彼女は少し迷ったあと、小さく「……お借りします」と頭を下げて浴室へ向かった。
その後ろ姿を見送りながら、私はなんとなく昨日のことを思い出す。
酔ってふにゃふにゃになっていた姿と、今の恥ずかしそうな姿。
同じ人なのに、かなり印象が違う。
しばらくして、シャワーの音が止まる。
そして髪を軽く拭きながら彼女が戻ってきた。
さっきよりかなりすっきりした顔をしていた。
ただ、どこか落ち着かない様子でもある。
「あの……」
少し言いづらそうに視線を逸らす。
「そういえば、服とか下着ってどこですか……?」
私はその質問に普通に答える。
「服はしわになるといけないからハンガーにかけてるよ」
「下着は畳んで置いてある」
そう伝えてから、
「帰る時に着替えればいいんじゃない?」
と言うと、彼女はさらに気まずそうな顔になる。
そして少しだけ頬を赤くしながら、
「えっと……ブラがないと、その……落ち着かないし……」
「見えちゃいますよね……」
と小声で言った。
私はその反応がなんだか可愛く見えてしまって、思わず少し笑う。
昨日はあんなに無防備だったのに、今はちゃんと羞恥心が戻ってきている。
そのギャップが妙に微笑ましかった。

コメント