彼女をなんとか着替えさせて、ベッドへ移動させたあと。
私はその寝顔を少しだけ確認してから、静かに部屋を出た。
完全に寝落ちしている。
規則正しい寝息だけが聞こえていて、もう大丈夫そうだった。
そこでようやく、私もシャワーを浴びに行くことにした。
服を脱いで、熱めのお湯を肩に当てる。
その瞬間、一気に疲れが抜けていく。
「はぁ……」
長い一日だった。
仕事して、飲み会行って、介抱して、タクシーで連れて帰って。
でも、お湯を浴びながらぼんやりしていると、自然とさっきの光景を思い出してしまう。
――お風呂場で座り込んでいた彼女。
普段の会社では、かなりきっちりしている。
身だしなみも綺麗で、仕事中も真面目。
トイレへ行く時ですら恥ずかしそうに許可を取ってくるような子。
そんな彼女が、お酒で理性が飛んで。
無防備なまま、私に介抱されていた。
床に座り込んで、力の入らない声で話して。
「立てないですー……」
なんて言いながら、されるがままになっていた。
そのギャップが、頭から離れない。
私はシャワーを浴びながら、小さく息を吐く。
たぶん疲れてる。
そう思うのに、胸の奥が妙にざわつく。
普段は絶対見せない姿を、自分だけが知ってしまった感覚。
それが変に意識に残っていた。
お湯の音だけが響く浴室の中で、私はぼんやり目を閉じる。
そして少しだけ、自分でも困る。
――なんでこんなにドキドキしてるんだろう。
シャワーを浴びながら、さっきまでの光景を脳裏に呼び起こしていた。
鮮明な記憶が引き金となり、下腹部が甘く疼き、濡れていくのがはっきりとわかる。
衝動に駆られるまま、そこにシャワーの温水をまっすぐに当てた。
「っ……あ……」
途端、背筋を稲妻のような快感が駆け抜けた。全身の細胞が粟立つほどの、強烈な電流。
すぐ隣の部屋には、彼女が眠っている。起きられたら困る、気づかれるわけにはいかない。
その焦燥感がさらに感覚を鋭敏にさせた。
溢れそうになる悲鳴を喉の奥で押し殺し、身体を震わせる。
絶頂の波が容赦なく押し寄せ、抗うことなくそのまま突き抜けてしまった。
あまりの快感の強さに、意識が一瞬なくなったような感覚になった。
気がついた時には、立ったままおしっこを出してしまっていた。
その後冷静になり、ーー何やってるんだろ、私と思う。
呆然としながら、シャワーで身体を洗い流す。
昼間、彼女のちょっと抜けたところを見て「みっともないなぁ」なんて笑ってしまったけれど。
「……人のこと、言えないじゃん」
自嘲気味にぽつり、呟きが漏れた。
情けなさと、まだ微かに残る火照りを抱えたまま、私は着替えるために、脱衣所に向かった。
着替えて部屋に戻ると、彼女はベッドの上でぐっすり眠っていた。
さっきまで苦しそうにしていたのが嘘みたいに静かな寝息を立てている。
私はその姿を少しだけ見つめてから、部屋の電気を落とした。
ソファーへ移動して、そのまま体を沈める。
ふぅ、と小さく息が漏れる。
今日は本当に色々ありすぎた。
昼までは普通に仕事をしていたのに、気づけば飲み会で介抱して、タクシーで連れて帰って、自宅で面倒を見ている。
しかも、普段は見せない彼女の姿をたくさん見てしまった。
会社では、真面目で少し遠慮がちで。
「お手洗い行ってもよろしいでしょうか」
なんて恥ずかしそうに聞いてくる子なのに。
酔った彼女は、驚くくらい無防備だった。
そのギャップを思い出して、私はソファーの上で小さく苦笑する。
そして同時に、少しだけ胸がざわつく。
明日の朝、彼女はどんな顔をするんだろう。
昨日のことをどこまで覚えているのか。
恥ずかしそうに謝るのか、それとも全部忘れているのか。
そんなことを考えていると、不思議と少し楽しかった。
私はクッションを抱えながら目を閉じる。
静かな部屋の中。
遠くから聞こえる寝息をぼんやり感じながら、ゆっくり意識が沈んでいった。

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